仕事をしていてこんなこと、思ったことないですか?
「あの先輩、めちゃくちゃ手が早い。自分が切ったら30分かかるのに、15分とかで終わってる……」
「盛り付けしてたら、いつも追い越される。なんでやろ」
新人のころは特に、こういう場面に出くわすことが多いと思います。そしてだいたいのひとが「あの人は器用なんやろな」「自分はセンスないのかも」と、どこかで自分のせいにしてしまいます。
でも、それは違います。
手が早い人は、センスや器用さで動いているわけじゃないんです。意識していることが、ちゃんとあります。
🎯 その一つ目が、「距離」です。
距離って、何の距離?
「距離を意識しろ」と言われても、最初はぴんとこないと思います。厨房で距離って何やねんと。
💡 ひとことで言うと、手が移動する距離をできるだけ短くするということです。
たとえば、右手で食材をつかんでお皿に盛るとき。食材の位置とお皿の位置が離れていれば、その分だけ手が遠くまで動かなければなりません。逆に近ければ、手の動きは最小限で済む。
「それだけのことで変わるの?」と思うかもしれません。でも——
1回あたり1秒短くなるとして、盛り付けが100回あれば約2分の差。200回なら約4分。
ランチのピーク中に4分は、かなり大きいです。
積み重ねというのは、ほんとうに侮れません。
「10センチ」と「3センチ」の話
現場を見ていてよく気になるのが、左手で持っている食材の位置が高すぎることです。
右利きの場合、左手でバットやお皿を持ちながら、右手で盛り付けることが多いと思います(左利きの方は逆で読んでください)。このとき、左手に持った食材がお皿から10センチほど離れている人が大半です。
なんとなくそのくらいの距離が「普通」に感じるんですよね。でも、その「なんとなく」が遅さの原因になっています。
10cm
❌ 「なんとなく」の距離
遅さの原因
3cm
✅ 目指すべき距離
バットがギリギリ触れないくらい
✅ 試してほしいのは、3センチです。 バットがギリギリお皿に触れないぐらいの距離感。言葉にすると大げさに聞こえますが、やってみると「あ、こんな感じか」とすぐわかります。
この距離感になってはじめて、盛り付けのスピードが体感できるぐらい変わります。きれいに盛ることを前提に、ぜひ今日の現場で試してみてください。
食材を台に置いている場合は「前傾姿勢」で
食材を手に持たず、作業台の上に置いて盛り付けているときも、同じ「距離の意識」が使えます。
このときのコツは、体を少し前かがみにして、食材をお皿のすぐ横に追いやりながら盛る感覚を持つことです。
🏃 スポーツで言うと、プレーが始まる直前の「構え」のイメージに近いです。体が前に入ることで、手の動きが自然とコンパクトになる。
😐 ぼんやり直立して作業する
→ 手が遠回りする
⚡ 前傾で臨戦態勢に入る
→ 体全体の効率が変わる
「なんかしんどそう」と思うかもしれないですが、慣れると逆にこの姿勢の方が楽に感じるようになってきます。体が仕事モードに入れるからだと思います。
意外と効く「足をロックする」技
もう一つ、個人的にかなり効果を実感しているのが足を作業台の下に引っかけて固定するやり方です。
台の下に足が引っかかる場所がある現場限定になりますが、これをやると——
奥や横に体が流れたときでも、足にぐっと力を入れるだけで瞬時に元の位置に戻ってこられます。
🏁 たとえば短距離走の選手がスタートブロックに足を押し当てているイメージ。固定する場所があるから、力が前に逃げずにすむ。厨房での足ロックもそれに近くて、体の軸がぶれないぶん、手の動きだけに全集中できます。
地味な話ですが、やってみると「あ、戻るのが楽やな」という感覚がすぐわかると思います。
距離を制すると、頭ひとつ抜ける
今回の話をまとめると、こうなります。
✅ 盛り付けは、食材とお皿の距離を3センチまで縮める
✅ 作業台置きのときは前傾姿勢で体ごと前に入る
✅ 足を固定して体の軸をブラさない
どれも今日からできることです。道具もいらないし、お金もかかりません。意識を変えるだけで、動きが変わります。
ただ、正直に言っておくと距離だけでは半分です。
距離を縮めても、動き自体がゆっくりなら限界があります。距離と組み合わせてはじめて爆発的に早くなるのが「スピードの意識」です。これについては別の記事で詳しく書いているので、距離の感覚がつかめてきたら読んでみてください。きっと「あ、そういうことか」とつながると思います。


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