1年目の夏、私はとんでもない賄いを作ってしまった。
夏野菜カレーの日だった。「奇抜に攻めて、意外と美味しいやんを狙う」というコンセプトで、トッピングの野菜とは別に、カレーの中にゴーヤと長芋を入れてブレンダーで混ぜた。我ながら斬新だと思っていた。でも完成したのは、とんでもなく歯触りの悪い最悪なカレーだった。先輩にボロクソに言われたのは言うまでもない。
それまで「賄いって余り物で適当に作ればいいんでしょ」と思っていた。でもその失敗で気づいた。賄いは「適当に作るもの」じゃない。むしろ、1年目が厨房の信頼を勝ち取れる数少ないチャンスなんだと。この記事では、私が試行錯誤の末にたどり着いた「賄いで評価を上げる方法」を、失敗談も含めて正直に書きます。
📌 この記事でわかること
- まかないで実は何を「見られているか」
- 余り物をうまく使う発想法とリスト管理術
- バイトスタッフ・先輩に喜ばれる賄いのパターン
- 評判が悪くても一番人気になれた転機の話
「まかないって何でもいい」は嘘だった
最初は本当にそう思っていた。余り物で作るんだし、豪勢にする必要もない。食べてもらえれば十分——そんな感覚だった。でも先輩に「これ何考えて作ったん?」と聞かれたとき、うまく答えられなかった。美味しくするための工夫が何もなかったからだ。
賄いには「ちゃんと考えながら作りなさい」という意味がある。私が働いていた職場では、「アルバイトの皆が頑張って働いてくれたんやから、愛情を持って美味しいものを作りなさい」という教えがあった。余り物でいい、でも手を抜くな——それが賄いへの向き合い方だった。
👨🍳 私の場合
夏野菜カレーに「奇抜さ」を狙ってゴーヤと長芋をブレンダーで混ぜ込んだ。完成したのは歯触りが最悪なカレー。先輩に「これ食えるか?」と言われた瞬間、賄いをなめていた自分を猛反省した。奇抜さよりも、まず「美味しく食べてもらう」ことが大前提だと気づかされた出来事だった。
まかないで見られている3つのこと
賄いは短時間で作るから、ごまかしが効かない。その人の素の料理センスと段取り力が出る。私が先輩たちを観察していて気づいた「賄いで見られていること」は主に3つある。
まず1つ目は食材の使い方と発想力だ。余り物をどう組み合わせるか、何を作ろうと考えるか——そこにその人の料理への姿勢が出る。2つ目は味付けの安定感。忙しい隙間に作っても、ちゃんと美味しいかどうか。3つ目が「愛情があるか」だ。食べる人のことを考えて作っているかどうか、不思議と伝わるものがある。
💡 例えるなら
賄いは「短時間の小テスト」みたいなもの。本番のコース料理は時間をかけて準備できるけど、賄いは即興。だからこそ、普段から食材や料理のことをどれだけ考えているかが正直に出る。先輩たちはそれをちゃんと見ている。
特にお昼の賄いは先輩シェフや料理長も食べる。私は毎回かなり緊張していた。色味、味付け、盛り付け——小言を言われることもあったけど、毎回フィードバックをもらえたのでめちゃくちゃスキルアップした。怖いけど、一番成長できる場でもあった。
余り物を「美味しく見せる」発想法——Excelリスト術
賄いで詰まるのは「何を作ればいいかわからない」という瞬間だ。余り物を見て、頭が真っ白になる。そこで私がやっていたのが、ジャンル別に料理名を書き出したExcelリストを作ること。すぐ見られるところに貼っておいて、食材と照らし合わせながら「今日はこれ」と選ぶ仕組みを作った。
👨🍳 私の場合
リストは5つのジャンルで各20種類ほど作った。ご飯もの(丼系)、お肉メイン、魚メイン、簡単に作れる系、副菜——これだけあると迷わない。さらに、前日のうちに翌日作るものを決めて帰ってからレシピを調べておく習慣をつけた。当日いきなり考えるより、圧倒的にクオリティが上がった。
余り物を見てから「何にしよう」と考えるより、先にレパートリーを持っておいて「この食材ならこれが作れる」と逆引きできる状態にする。これだけで賄いの質がぐっと上がる。料理の種類を増やすには、普段からレシピを意識的に集めることも大切だ。
✅ ポイント
リストは「完璧」じゃなくていい。まずは自分が作れる料理を10〜15個書き出すだけでOK。それをジャンル別に分けて貼っておくだけで、迷う時間がなくなる。
▼ イメージ:賄いリストのExcel構成(各ジャンル20種類ほど)
| ジャンル | 料理① | 料理② | 料理③ | 料理④ | …(20種類まで) |
|---|---|---|---|---|---|
| 🍚 ご飯もの | 回鍋肉丼 | 親子丼 | 牛丼風 | 炒飯 | … |
| 🥩 お肉メイン | 青椒肉絲 | 唐揚げ | 豚のしょうが焼き | チキンソテー | … |
| 🐟 魚メイン | 鮭のムニエル | ぶりの照り焼き | 鯖の味噌煮 | アジフライ | … |
| ⚡ 簡単系 | パスタ | ドリア | カレー | 焼きそば | … |
| 🥗 副菜 | ほうれん草のおひたし | きんぴらごぼう | ポテトサラダ | 冷奴 | … |
※ これを印刷して冷蔵庫や棚に貼っておくと、すぐ見て選べる
バイトスタッフ・先輩が喜ぶ賄いのパターン
長く働いていると、「これを作ったら喜ばれる」というパターンが見えてくる。私の経験上、夜の賄いでバイトスタッフに特に人気だったのは唐揚げ、ドリア、パスタ、丼系(親子丼や牛丼風)だ。しっかり食べられて、疲れた体に染みるものが刺さる。
お昼の先輩向けには、品数を意識するといい。メインに小鉢が1〜2品あるだけで「ちゃんと考えてる」と印象が変わる。作る量が多くなるけど、スープ1品追加するだけでもだいぶ違う。「品数の多さ」より「一品一品の完成度」を上げることの方が長期的には評価が高まった。
✅ 喜ばれやすいメニューの傾向
バイトスタッフ向け → ボリュームがあって、食べ慣れた味(唐揚げ・パスタ・丼系)
先輩シェフ向け → 品数と丁寧な仕事感(副菜+メイン+汁物の組み合わせ)
どちらにも刺さる → しっかり味が決まっているもの(味付けが薄いと一番コメントされる)
評判が悪くても「一番人気」になれた転機
正直に言うと、最初の頃の私の賄いの評判はそれほど良くなかった。職場のホールスタッフのバイトさんの声が厨房にも聞こえてくる。「〇〇さんの賄いやったら食べて帰ろう」「今日は〇〇さんの賄いやから楽しみ」——そういう声が聞こえる人と、聞こえない人がいる。最初は私の名前は出てこなかった。
同期の料理人と、いつの間にか賄いで競い合うようになっていた。あいつより美味しいもの作りたい、という気持ちが正直あった。そんなとき、ある先輩が味付けのコツをこっそり教えてくれた。だし感の出し方と、仕上げの一手間だった。
👨🍳 私の場合
その先輩のアドバイスを実践してから、少しずつバイトさんの反応が変わってきた。そして気づいたら「今日ツッチーさん?やった!」という声が聞こえるようになっていた。若手の中で一番人気の賄いを作る人になれたとき、素直にうれしかった。賄いが苦手だった私でも変われた。大事なのは「うまくなろう」と思い続けることだと実感した。
賄いは毎日ある。毎日ある分、積み重ねが効く。最初は全然うまくいかなくても、先輩にフィードバックをもらい、リストを作り、前日から考えておく——その繰り返しで確実に上手くなれる。
まとめ——まかないで差をつける5か条
📋 この記事のまとめ
- ✅ 「余り物だから適当でいい」は大間違い。賄いは信頼を作るチャンス
- ✅ 賄いでは発想力・味付けの安定・愛情の3つが見られている
- ✅ ジャンル別レパートリーリストを作り、前日に翌日の献立を決めておく
- ✅ バイトには「食べ慣れた美味しさ」、先輩には「丁寧な仕事感」を意識
- ✅ 最初は評判が悪くても大丈夫。先輩に教わり、毎日続ければ必ず変われる
賄いは「本番前の練習」でもあり、「毎日の評価の場」でもある。失敗しても、またすぐ次がある。私もゴーヤ長芋カレーという黒歴史から這い上がった。あなたも大丈夫です。まずは今日の賄い、一品だけ「食べてもらうことを考えて」作ってみてください。


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