激安から高級まで、実は「同じ工場」というPB商品のからくり

1年目が知らなかった話

スーパーの棚を思い浮かべてほしい。
片方には有名メーカーのロゴが輝く人気商品、もう片方にはその半額近い、素っ気ないパッケージのPB(プライベートブランド)商品が並んでいる。

味を比べてみたら、驚くほど似ている——そんな経験をしたことはないだろうか。
実はそれ、気のせいではないかもしれない。
その2つの商品、同じ工場の、同じラインで作られているケースが少なくないのだ。

なぜそんなことが起きるのか。
そして、なぜメーカーはそれを大っぴらに言わないのか。
スーパーの値札の裏側をのぞいてみよう。

📌 この記事でわかること

  • PB商品とNB商品、そもそも何が違うのか
  • なぜ同じ工場・同じラインで両方作れるのか
  • メーカー名が「言えない」契約上の事情
  • 同じ工場でも味が変わることがある理由
  • 誰でも製造元のヒントを探れる、ある方法

そもそもPB商品とは何なのか

PBとは「プライベートブランド」の略で、スーパーやコンビニなど小売店が自社の名前で企画・販売する商品のことだ。
セブン‐イレブンの「セブンプレミアム」、イオンの「トップバリュ」、西友の「くらしにいいもの」などが代表格。

これに対し、味の素やカゴメのように、メーカー自身が企画してどの店でも売っているのが「NB(ナショナルブランド)」商品。
日本でPBが本格的に広がったのは1960年代、ダイエーや西友が独自の格安商品を打ち出したのが始まりとされる。
その後2007年、セブン&アイが「セブンプレミアム」を大々的に展開したことで、PBは「安かろう悪かろう」から「NBに匹敵する品質」へとイメージを大きく変えた。

なぜ同じ工場・同じラインで作れるのか

食品工場のラインは、24時間フル稼働しているわけではない。
むしろ、自社商品だけを作っていると稼働率が7〜8割程度で頭打ちになることが多いと言われている。

そこでメーカーは、空いた時間・空いたラインを使って、小売店から発注を受けた商品を作る。
これが「受託製造」、業界用語でいうOEM生産だ(他社ブランドの商品を代わりに作る仕組みのこと)。
小売店側は自前の工場を持たずに商品を作れるし、メーカー側は広告費や営業コストをかけずに、確実な発注量を確保できる。
双方にとって、実はかなり合理的な仕組みなのだ。

マヨネーズやカレールウ、パン、冷凍食品など、大手メーカーが強い分野ほど、この受託製造は広く行われている。
数量が読みやすく、生産ラインの相性もいいからだ。

🕵️ 業界の裏側

セブンプレミアムの人気商品「金の食パン」は、山崎製パン・フジパン・敷島製パン(Pasco)という食パン業界の大手3社が共同開発に関わったことが公式に発表されている、かなり珍しいケース。
普段この手の話が表に出ないのは、単に「隠している」からというより、契約上そもそも公表できない事情があるからだ。

メーカー名が「言えない」契約の話

PB商品の受託製造契約には、多くの場合秘密保持条項(NDA)が盛り込まれている。
「どこの工場で作っているか公表しない」ことが、契約の条件になっているのだ。

理由はシンプルで、小売店側からすれば「うちのPBは、あの有名メーカーが作ってます」と広まってしまうと、PB独自のブランド価値が薄まってしまう。
メーカー側からしても、自社ブランドの商品と競合するPB商品を作っていることが表沙汰になれば、自社商品の顧客と気まずい関係になりかねない。
だからこそ、パッケージの製造者表示欄には、聞いたことのない会社名や、持株会社(グループ全体をまとめる親会社のような会社)の名前だけが小さく書かれていることが多い。

同じ工場でも、味が同じとは限らない

ここが誤解されやすいポイントだが、「同じ工場=まったく同じ商品」ではない

小売店側は当然、NB商品より安い価格で売りたい。
そのため、発注時に原材料のグレードや配合を見直し、コストを抑えた別レシピで作ってもらうことがよくある。

①原材料のランクを下げる
NB品では上級品を使う原料を、PB品では規格外品や等級の低いものに置き換える。

②香料や添加物の配合を調整する
コストのかかる天然香料を減らし、代わりに合成のもので風味を近づける。

③パッケージや充填ラインの仕様だけ変える
中身のレシピはほぼ同じでも、容器やラベルの原価を削って本体価格を下げる。

つまり「同じ工場」というのはあくまで製造インフラの話であって、味の設計図(レシピ)はPB用に別で用意されているのが実情。
まれに本当にレシピまで完全に同一という“ガチの同一品”もあると言われるが、それは公表されない限り、外からは確かめようがない。

💭 そういえば確かに

「PBのカップ麺、なんとなく味が薄い気がする」「PBのお菓子、有名店のものより少しパサつく」——そう感じたことがあるなら、それは気のせいではなく、コスト調整の結果である可能性が高い。

消費者が製造元を突き止めようとした話

製造者名が伏せられていても、実は誰でも手がかりを探る方法がある。
それが商品パッケージのバーコード、JANコードだ。

JANコードの先頭2桁は国コード(日本は45か49)、続く数桁は「メーカーコード」と呼ばれ、GS1 Japan(商品バーコードの管理を行う業界団体)に企業ごとに登録されている。
このメーカーコードは、GS1 Japanの検索データベースで照会すると、登録企業名が判明する仕組みになっている。
パッケージに書かれた表示名と、バーコードが示す登録企業名が違う——このズレに気づいた消費者やブロガーが、PB商品の「本当の作り手」をSNSで推理・共有する、ちょっとした文化が生まれている。

🌀 都市伝説チェック

「バーコードを見れば必ず製造元がバレる」というのは半分本当で半分誤解。
持株会社や物流子会社の名前で登録されているケースもあり、コード照会だけで100%特定できるとは限らない。

PB談義で使えるひとネタ

厨房での何気ない雑談に、この話は意外と使える。
「このPBのマヨネーズ、大手メーカーが裏で作ってるらしいですよ」と切り出せば、たいてい「え、そうなんですか!?」と食いつかれる。
ただし特定の企業名を断定するのは、契約上表に出ていない以上、あくまで推測の域を出ない話として扱うのが誠実な姿勢だろう。

まとめ

📋 この記事のまとめ

  • ✅ PBは小売店が企画する自社ブランド商品で、NBとは発注の仕組みが違う
  • ✅ 工場の空きライン活用のため、大手メーカーがPBを受託製造することがある
  • ✅ 契約上の秘密保持条項があり、製造元は基本的に公表されない
  • ✅ 同じ工場でも、原材料や配合を変えて別レシピで作られることが多い
  • ✅ JANコードのメーカーコードから、製造元のヒントを探ることもできる

次にスーパーで安いPB商品を手に取ったら、隣の棚の有名メーカー品と見比べてみてほしい。
もしかしたらその2つ、同じ工場の、同じ屋根の下から生まれてきたのかもしれない。
値札の裏には、意外と奥深いものづくりの駆け引きが隠れている。

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