A5ランクは「おいしさ」の証明じゃない——歩留まりと脂肪交雑の話

1年目が知らなかった話

焼き肉屋で「A5ランク」という文字を見ると、なんとなく「これは絶対においしいやつだ」と思ってしまう。それは多くの人に共通する感覚だと思う。でも実は、A5という記号に「おいしさ」の意味はひとつも含まれていない。

「え、そうなの?」と思った人も多いはず。A5=最高においしい肉、というのは世間に広く浸透したイメージだ。でも格付けの仕組みを知ると、それが「生産者と流通のための評価指標」であって、「食べた人が感じるおいしさ」とは別の話だということがわかる。

今回は、知っているようで意外と知らない牛肉の格付けの話をしよう。

📌 この記事でわかること

  • 「A」「B」「C」の意味は生産効率(歩留まり)であること
  • 「1〜5」の数字は脂肪の入り方など4項目の評価であること
  • A5が「最もおいしい」とは言えない理由
  • 格付けを知ると肉の選び方が変わる理由

「A・B・C」の意味、実は誰も教えてくれない

牛肉の格付けは「公益社団法人日本食肉格付協会」が定めた規格に基づいている。A・B・Cという記号は「歩留まり等級」と呼ばれる評価で、1頭の牛からどれだけ多く肉が取れるかを示している。

Aが最も多く取れる(歩留まりが良い)、Cは取れる割合が少ない。つまりこれは「生産者にとっての効率の良さ」を評価したものだ。消費者の口に入ったときのおいしさとは、まったく関係がない。

💭 そういえば確かに

「A5」と「B5」が同じ棚に並んでいても、値段は「A5」のほうが高いことが多い。でもこれは「おいしさの差」ではなく、「取れる量の差」による希少価値が影響していることもある。

「1〜5」の数字が評価しているもの

次に「5」という数字の意味。これは「肉質等級」と呼ばれ、以下の4つの項目を総合的に評価したものだ。

①脂肪交雑(BMS):いわゆる「霜降り」の入り方。

②肉の色と光沢。

③肉の締まりときめ細かさ。

④脂肪の色・光沢・質。この4項目を総合して1〜5の数字が付けられる。5が最高で、特に霜降り(脂肪交雑)の評価が数字に最も大きく影響するとされている。

🕵️ 業界の裏側

脂肪交雑の評価基準「BMS(Beef Marbling Standard)」はNo.1〜12まであり、A5はBMS No.8〜12に相当する。A3はBMS No.4〜5。焼き肉業界では「赤身好きなら必ずしもA5である必要はない」と言われる。

「A5=最高においしい」が成立しない理由

ここが最も大事なポイントだ。格付けは「霜降りの多さ」を高く評価する仕組みになっているが、霜降りがたっぷり入った肉が「おいしい」かどうかは、食べる人の好みによる。

近年、特に若い世代を中心に「赤身肉志向」が強まっている。さっぱりとした赤身の方がうまみが感じやすく、たくさん食べられると感じる人も多い。実際、ランプ肉やイチボなどの赤身部位は、脂肪交雑が少なくてもA4・A3にしかならないことが多いが、肉好きの間では高評価を得ている。

🌀 都市伝説チェック

「A5は必ずおいしい」→ △ 格付けは霜降りの量を評価するもので、おいしさの絶対的保証ではない。食べ方(薄切りか厚切りか)や部位によっても、A5より低ランクの肉の方が好まれることは珍しくない。

格付けを知ると「お得な肉」が見えてくる

この仕組みを知ると、お肉の選び方が変わってくる。たとえば「B5」という格付けは、歩留まりは少ないが肉質はA5と同等ということを意味する。同じ「5」ランクでも、B5はA5より価格が安いことが多い。理由は単純に「同じ牛から取れる量が少ない」だけで、肉質の評価は全く変わらない。

また「A4・A3の赤身」は格付けとしては中位だが、噛むほどにうまみが出る赤身の旨さは別次元の話。牛肉を選ぶときに「A5かどうか」だけを基準にするのは、もったいないかもしれない。

✅ ポイント

同じ「5」なら「A5」も「B5」も肉質等級は同じ。B5は「1頭から取れる量が少ない」だけなので、値段対品質で見ると掘り出し物になることもある。

まとめ:格付けは「選ぶための地図」であって「正解」ではない

📋 この記事のまとめ

  • ✅ 「A・B・C」は1頭の牛から肉が取れる割合(歩留まり)を示す記号
  • ✅ 「1〜5」は脂肪交雑・肉の色・きめ・脂肪の質の総合評価
  • ✅ A5は「霜降りが多く歩留まりが良い」という意味で、おいしさの保証ではない
  • ✅ B5はA5と同じ肉質でも価格が抑えられることがある
  • ✅ 赤身派にはA4・A3のランプやイチボがベストチョイスになることも

「A5=最高においしい」は、格付け制度が意図して作ったイメージではなく、いつの間にか広まった”思い込み”だ。次に焼き肉屋や肉屋で格付けを見たとき、「AはどれだけとれるかのA、5は霜降りの5」と頭の片隅で思い出してほしい。知っているだけで、肉の注文がちょっと楽しくなるはずだ。

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