【英語になった日本語】「umami」「tofu」「edamame」——翻訳されずに英語になった三つの日本語

料理と言語

アメリカのスーパーの冷凍食品コーナーには、いまや当たり前のように「EDAMAME」と書かれたパッケージが並んでいる。

だが英語話者の多くは、これが「枝豆」のローマ字だとは意識していない。

実は英語という言語には、翻訳されずにそのまま取り込まれた日本語の食べ物言葉が思いのほか多い。

その代表格が「umami」「tofu」「edamame」の三語である。

「tofu」——実は300年前からすでに英語の中にいた

「tofu」は比較的新しい外来語だと思われがちだが、実際の歴史はかなり古い。

1704年、スペイン人宣教師ドミンゴ・フェルナンデス・デ・ナバレテによる旅行記の英訳版に、豆腐の作り方を説明する記述が登場する。

これが英語文献に残る最古級の記録とされている。

1770年には、清(中国)に駐在していたイギリス人商人ジェームズ・フリントが、ベンジャミン・フランクリンに宛てた手紙の中で「towfu」というつづりでこの食品を紹介した。現在の「tofu」とほぼ同じ発音のつづりである。

ただし正式に英語辞書へ載るのは1875〜80年ごろとされる。

初出から数えると、実に150年以上かけてじわじわと英語に根を下ろした言葉ということになる。

当時は中国由来の食品として紹介されることが多く、「日本語」としてのイメージが強まったのは、20世紀に入り日系移民や和食レストランが北米に広がってからだった。

「umami」——発見から半世紀以上、英語になるのを待たされた言葉

1908年2月、東京帝国大学(現在の東京大学)の池田菊苗博士が、昆布だしからうま味成分であるグルタミン酸の結晶を取り出すことに成功した。

12kgの昆布から得られた結晶は、わずか30gだったという。

池田は1899年からドイツ・ライプツィヒ大学に留学しており、その頃にトマトやアスパラガス、肉、チーズに感じた「おいしさ」を、帰国後に妻の貞が買ってきた昆布だしを口にしたときに思い出し、その正体を探る研究を始めていた。

甘味・塩味・酸味・苦味という西洋の四基本味のどれにも当てはまらないこの味を、池田は「うまい」の語幹に接尾辞「み」を加えて「うま味」と名付けた。

翌1909年には、世界初のうま味調味料として、現在も続くブランド「味の素」も発売されている。

ところが英語の権威ある辞書Oxford English Dictionaryが確認できる英語での使用例は、1963年ごろまで下る。

さらに世界の科学界が「うま味は本当に第五の基本味なのか」という論争に決着をつけたのは、2000年になってからだ。

アメリカ・マイアミ大学のニルパ・チョウダリらの研究チームが、舌の細胞でグルタミン酸を感知するセンサー(受容体)を発見し、学術専門誌Nature Neuroscienceに論文を発表した。

池田の発見から数えると、実に92年後のことである。

「edamame」——枝付きのまま名前も一緒に運ばれた豆

「枝豆」は、畑のあぜ道で栽培されていたことから「畦豆(あぜまめ)」と呼ばれていたという説が有力だ。

それが枝付きのまま茹でて売り歩く習慣が定着する中で「枝豆」という呼び名に変わっていったとされる。

江戸中期(18世紀半ばごろ)の記録には、すでに夏場になると枝豆売りの姿が町に見られたという記述が残っている。

英語文献での初出は1951年ごろとされるが、代表的な英語辞書Merriam-Webster Collegiate Dictionaryに正式収録されたのは2008年だった。

ちょうど北米で寿司や健康食への関心が高まり、枝豆ブームが本格化した時期と重なる。

なぜ「訳さず」に英語になったのか

3語に共通するのは、対応する英語の単語がそもそも存在しなかったという点だ。

soybean(大豆)はあっても、枝付きのまま茹でた若い大豆だけを指す一語は英語になかった。

凝固させた豆乳を的確に言い表す一語も、英語にはなかった。

「うま味」に至っては、西洋の四基本味という枠組みそのものに存在しなかった味覚概念である。

翻訳のしようがなかったからこそ、発音をそのまま輸入するしかなかった——それがこの三語に共通する事情だった。

🌐 言語的視点

言語学ではこうした「翻訳されずに借用される単語」を借用語(loanword)と呼ぶ。輸入元の文化に固有の物や概念で、輸入先の言語に相当する語彙が存在しない場合、翻訳を経ずに発音だけがそのまま取り込まれる。sushi、karaoke、emojiなども、同じ経路をたどって英語になった日本語である。

🍃 まとめ

「tofu」は300年、「umami」は発見から100年近く、「edamame」は英語文献の初出から60年ほどかけて、それぞれ英語に定着した。かかった時間には差があるが、共通するのはただ一点。対応する言葉が英語になかったからこそ、訳されずにそのまま取り込まれた、という事実である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました