赤い卵の方が体にいい、というのは思い込みだった

1年目が知らなかった話

スーパーの卵売り場で、赤玉と白玉が並んでいるのを見て、なんとなく赤玉の方を手に取ったことはないだろうか。
心なしか栄養がありそうな気がして、少し値段が高くても納得して買い物カゴに入れる。
そんな人、実は多いのではないだろうか。

結論から言うと、卵の栄養価は殻の色ではまったく決まらない
これは栄養士や養鶏の現場では当たり前の常識だが、一般にはあまり知られていない。

なぜ赤玉と白玉があるのか、そしてなぜ赤玉の方が高いのか。
卵売り場の「思い込み」の正体を掘り下げていく。

📌 この記事でわかること

  • 卵の殻の色を決めているのは鶏の「品種」であること
  • 「耳たぶが赤い鶏が赤玉を産む」という説の真偽
  • 赤玉が白玉より高い、本当の理由
  • 栄養価の違いは科学的にほぼないという事実
  • 黄身の色の濃さと栄養価も無関係だということ

卵の色を決めているのは「品種」——赤玉と白玉の正体

卵の殻の色は、産んだ鶏の品種によって決まる。
代表的な白玉を産むのは「白色レグホン」という品種で、日本の卵の多くを支える主力品種だ(白い羽としっかりした体格が特徴の卵用品種)。
一方、赤玉(褐色卵)を産むのは「ロードアイランドレッド」やその交配種などの、いわゆる赤鶏と呼ばれる品種が中心になる(赤褐色の羽を持つ、卵肉兼用の丈夫な品種)。

殻の色をつけているのは、プロトポルフィリンという色素だ(鶏の体内でつくられる天然の色素成分のこと)。
この色素は、卵が卵管(卵が鶏の体内で作られる際に通る管のことだ)を通過する最後の数時間で殻の表面に沈着する。
どれだけの量を分泌するかは鶏の遺伝、つまり品種によってあらかじめ決まっている。
言ってしまえば、卵の色は中身の栄養とは無関係な「外見上の個性」にすぎない。

「耳たぶが赤いと赤玉を産む」の噂、どこまで本当か

養鶏の現場では、鶏の耳たぶ(耳朶)の色を見れば産む卵の色がだいたいわかる、という経験則が語り継がれている。
耳たぶが赤い鶏は赤玉を、白い鶏は白玉を産む傾向があるというものだ。

これは品種ごとの遺伝的な傾向と一致することが多く、目安としては役に立つ。
ただし絶対的な法則ではなく、例外の品種も存在する。
あくまで現場の経験則であって、科学的な生理メカニズムそのものではない点には注意したい。

🕵️ 業界の裏側

実際の養鶏場では、この経験則を使って導入する鶏の品種を選び、あらかじめ「この鶏舎は赤玉用」「こちらは白玉用」と生産ラインを分けている。出荷段階で色による選別作業をほぼ発生させずに済むよう、そもそもの品種選定の時点でコントロールしているというわけだ。

なぜ赤玉の方が高いのか——コストの正体

栄養価が同じなら、なぜ赤玉は白玉より値段が高いことが多いのか。
答えは中身の栄養ではなく、生産コストにある。

赤玉を産む赤鶏は、白色レグホンに比べて体格が大きい傾向があり、そのぶん餌の消費量も多くなる。
また、白色レグホンは卵用に長年改良が重ねられてきた品種で、産卵数や飼料効率の面で非常に優秀だ。
これに対して赤鶏は産卵数がやや少ない傾向があり、同じ数の卵を得るためのコストが高くなりやすい。

結果として、赤玉は生産コストの高さがそのまま卸値や店頭価格に反映される。
栄養価が高いから高いのではなく、育てるのに手間とコストがかかるから高い、というのが実態に近い。

栄養価はほとんど同じ——食品成分表が示す事実

文部科学省が公表している日本食品標準成分表(国が公表している、食品の栄養成分をまとめた公的データ集のことだ)では、鶏卵の成分が品種や殻の色によって分類されることはない。
つまり公的なデータの上でも、赤玉と白玉を区別する栄養上の根拠は存在しないということになる。

実際に卵の栄養成分が変わるのは、殻の色ではなく鶏に与える餌の内容だ。
オメガ3脂肪酸を強化した餌や、ビタミンEを添加した餌で育てられた鶏は、その成分が卵にも反映される。
つまり「高栄養価の卵」を選びたいなら、見るべきは殻の色ではなくパッケージに書かれた飼育方法や飼料の表示ということになる。

では味の方はどうか。
味の感じ方も、殻の色そのものより黄身のコクや鮮度に左右される部分が大きく、これも結局は鶏の餌や飼育環境によるところが大きい。
殻の色を見ただけで味の優劣を判断することはできないのだ。

🌀 都市伝説チェック

「赤玉は栄養価が高い」という話は、根拠のない都市伝説に分類していい。正しくは、栄養価を左右するのは殻の色ではなく鶏の餌の中身である。

黄身の色が濃い=栄養満点、も実は思い込み

卵にまつわる思い込みは、実はもうひとつある。
黄身の色が濃いほど栄養価が高い、という見方だ。

黄身の色は、パプリカやマリーゴールドなどに含まれるカロテノイド色素の含有量で決まる。
これも鶏の餌の配合次第で自在に変えられるもので、色の濃さそのものは栄養価の指標にはならない。
濃いオレンジ色の黄身を見て「濃厚でおいしそう」と感じるのは味覚の演出としては理解できるが、それを栄養の高さと直結させるのは早合点というわけだ。

✅ ポイント

卵を選ぶときは色ではなく、賞味期限の新しさと、飼料や飼育方法の表示を確認する方が、実際の品質判断としては理にかなっている。

📋 この記事のまとめ

  • ✅ 卵の殻の色は鶏の品種で決まる、栄養とは無関係
  • ✅ 「耳たぶの色」は目安であって絶対の法則ではない
  • ✅ 赤玉が高いのは栄養価ではなく生産コストの違い
  • ✅ 栄養価も味も、餌の内容次第で殻の色では判断できない
  • ✅ 黄身の色の濃さも栄養価の指標にはならない

次にスーパーの卵売り場に立ったとき、赤玉と白玉のどちらを選ぶかで一瞬迷ったら、この話を思い出してみてほしい。
値段の違いの理由を知っているだけで、卵売り場での買い物が少しだけ面白くなるはずだ。

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