カニカマの正式な名前は、実は「風味かまぼこ」だった

1年目が知らなかった話

「カニカマ」って、正式な商品名だと思っていませんか?
実はスーパーでパッケージをよく見ると、商品名の欄には別の言葉が書かれています。
おにぎりの具、サラダのトッピング、寿司ネタ……とすっかり食卓の定番になったあの赤いスティック。その正体を知ると、ちょっと誰かに話したくなります。

📌 この記事でわかること

  • カニカマの正式名称は、表示ルール上「風味かまぼこ(かに風味)」であること
  • 世界初のカニカマは1972年、石川県のスギヨが開発したこと
  • 開発のきっかけは人工クラゲづくりの失敗だったこと
  • 赤い色もカニの香りも、すべて食品添加物で再現されていること

実はカニカマ、パッケージに堂々と「カニじゃない」と書いてある

おにぎりやサラダ、寿司ネタとしてもおなじみのカニカマ。
実はスーパーで手に取ってパッケージをよく見ると、商品名の欄に「風味かまぼこ」または「風味かまぼこ(かに風味)」と書かれているのに気づきます。

これは日本農林規格等に関する法律(通称JAS法)にもとづく食品表示のルールで、カニ肉がほとんど入っていない商品を「カニ〇〇」と名乗ることは認められていないため。
つまり「カニカマ」という呼び名自体、公式な商品名ではなく通称にすぎません。正式には「かに風味のかまぼこ」という扱いなのです。

💭 そういえば確かに

言われてみれば、パッケージの原材料表示のすぐ上に小さく「風味かまぼこ」と書いてあるのを見たことがある人も多いはず。普段は素通りしがちな一文です。

きっかけは人工クラゲ作りの大失敗だった

1972年、石川県七尾市の水産加工会社スギヨが「珍味かまぼこ・かにあし」を発売したのが、世界初のカニカマと言われています。開発のきっかけは意外にもクラゲでした。

1960年代後半、日本は中国からクラゲを輸入していましたが、当時はまだ日中国交正常化(1972年)前で、国交の悪化により輸入がストップ。
当時3代目社長だった杉野芳人氏は、昆布から取れるアルギン酸(昆布のぬめり成分)を使って人工クラゲを作ろうと試みていました。

ところが開発は最終段階で行き詰まり、失敗作を試しに刻んで食べてみたところ、食感がカニの身にそっくりだったといいます。
ここから「人工クラゲ」の開発は「人工カニ肉」へと方向転換していきました。

「インチキじゃないか」の抗議から生まれた開発ヒストリー

本業のかまぼこ製造技術を応用してつくられた「かにあし」は、本物よりずっと手頃な価格でカニ風味を楽しめると話題になりました。

一方で「本物のカニだと思って買ったのに」という抗議の声も少なくなかったといいます。
杉野氏はこの声を逆手に取り、「カニのようでカニでない」というキャッチコピーを掲げ、あくまで”アイディア商品”として売り出しました。

広島の大崎水産も1974年に棒状タイプの商品を発売し、こちらは全国で大ヒット。
1978年に売上10億円、1982年には40億円に達し、1983年には50社以上がカニカマ製造に参入したといいます。

「カニ」と名乗って公正取引委員会に叱られた会社もある

大崎水産は当初、この棒状商品を「カニスチック」という名前で売り出していました。
ところが発売直後、公正取引委員会から「カニがほとんど入っていないのに、カニを名乗るのはまかりならん」と指摘を受け、商品名を「フィッシュスチック」に変更せざるを得なくなりました。

この一件をきっかけに、業界団体と公正取引委員会は長い年月をかけてパッケージ表示の基準づくりを重ねていくことになります。今の「風味かまぼこ」表示は、そうした積み重ねの延長線上にあるものです。

🕵️ 業界の裏側

「カニ」を名乗れず「フィッシュ」に改名——今なら笑い話ですが、当時の企業にとっては死活問題でした。商品名ひとつでヒットが左右される時代だったのです。

赤い色も、カニの香りも、すべて”あとから足したもの”

カニカマの主原料は、実はスケトウダラのすり身。海外で加工された冷凍すり身を輸入して使うことが多いといいます。

すり身を急速冷凍・再冷凍することでカニの脚のような繊維状の食感が生まれ、外側の赤い色は紅麹色素(紅麹菌由来の天然着色料)やコチニール色素、トマト色素といった食品添加物の着色料でつけられています。
カニの香りと味も、香料とかにエキスという添加物によるもので、実際のカニ肉は基本的に使われていません。

🌀 都市伝説チェック

「カニアレルギーの人でもカニカマなら安心?」→ 答えはNOに近いです。かにエキスなど微量のカニ由来成分が使われている場合があり、カニは食物アレルギー表示制度で「準ずる」品目のひとつでもあるため、自己判断せず原材料表示を確認するか医師に相談するのが安全です。

世界に広がったカニカマ、生産量世界一はまさかの国

日本生まれのカニカマは今や世界中で愛される食材になっています。フランスやスペインをはじめとするヨーロッパでは特に消費量が多く、現地では「スリミ」(すり身のフランス語読み)という名前でも親しまれています。

意外なことに、世界最大のカニカマ生産国は日本ではなくリトアニア。同国のビチュナイ社が世界シェアの上位を占め、ヨーロッパ各国へ輸出しています。
タイやフィリピンでは本物のカニが手に入りやすいにもかかわらず、カニカマ自体が人気食品として定着しているというから面白いところです。

居酒屋で使えるカニカマ雑学

「カニカマって実はカニじゃないんだよ」は、もはや誰でも知っている話。
でも「公正取引委員会に叱られた会社がある」「発祥は人工クラゲの失敗作」あたりまで話せると、一段深い雑学として喜ばれるはずです。

📋 この記事のまとめ

  • ✅ カニカマの正式名称は「風味かまぼこ」または「風味かまぼこ(かに風味)」
  • ✅ 世界初のカニカマは1972年、スギヨの「珍味かまぼこ・かにあし」
  • ✅ 開発は人工クラゲづくりの失敗から生まれた
  • ✅ 主原料はスケトウダラのすり身で、色や香りは添加物で再現
  • ✅ 今や世界最大の生産国はリトアニア

次にサラダバーやコンビニでカニカマを見かけたら、パッケージの片隅を覗いてみてください。「風味かまぼこ」の五文字に、半世紀分の開発秘話が詰まっています。

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