サラダの水切りをサボる人は、ドレッシングを半分捨てている

白いボウルに盛った水滴のついたレタスとミニトマト、奥にサラダスピナーとドレッシングの瓶のイラスト 厨房の常識アップデート

こんな話、一度は聞いたことないでしょうか?

「サラダの葉っぱは、冷水にさらすとシャキッとする」

レタスやベビーリーフを洗って、冷たい水にしばらく浸けておく。ザルに上げて、トントンと軽く振って、器に盛る。ドレッシングをかけて、はい完成。誰に教わったかも覚えていないまま、毎日この流れでサラダを作っている人は多いと思います。

でも、その「トントン」のあと、葉っぱの間にどれくらい水が残っているか、気にしたことはありますか?食べ終わったサラダの皿の底に、白っぽい水たまりができていたことは?

この記事では、冷水にさらす知恵は正しいのに、なぜかサラダが水っぽくなる理由と、今日から変えられる水切りのひと手間を紹介します。

半分
アリ

今回の常識判定

「サラダは冷水にさらせばOK」

冷水にさらすのは正解。ただし、そのあとの水切りまでがセットです。

この記事でわかること
  • 冷水にさらすと、葉がシャキッとするしくみ
  • 水切りが甘いと、ドレッシングの味が乗らない理由
  • 皿の底に水がたまるのはなぜか
  • お店でやっている水の切り方

「冷水にさらすとシャキッとする」は、ちゃんと正しい

まず大事なことから。冷水にさらすのは、間違いではありません。昔から続く、ちゃんと理にかなった知恵です。

野菜の葉は、たくさんの小さな細胞でできています。収穫してから時間がたつと、細胞の中の水分が少しずつ抜けて、葉はしんなりしてきます。そこで冷水に浸けると、細胞がまわりの水を吸い込んで、中からパンと張った状態に戻ります。これが、あのシャキッとした食感の正体です。

ただし、浸けっぱなしはおすすめしません。長く浸けすぎると、葉の味や栄養の一部が水に溶け出してしまいます。葉が張ったと感じたら、そこで引き上げるのが目安です。

ひとくち科学

水には、塩分や糖分が薄いほうから濃いほうへ移動しようとする性質があります。これが浸透圧です。

真水に浸けた葉は、細胞の中のほうが濃いので、水を吸い込んで張ります。逆に、塩をふると細胞の水が外に出ていく。これが「塩もみ」です。

もっと詳しく:野菜の塩もみと浸透圧の話

問題は、そのあとに残った水

問題は、冷水から上げたあとです。ザルで振っただけの葉には、表面にも、葉と葉の重なりにも、思った以上に水が残っています。この水が、2つの悪さをします。

1つ目は、ドレッシングを薄めること。ドレッシングは、そのまま食べてちょうどいい濃さに作られています。そこに葉の水が混ざれば、塩気も酸味もぼやけてしまいます。

2つ目は、ドレッシングをはじくこと。多くのドレッシングには油が入っています。油と水は混ざらないので、濡れた葉の上では油がうまくくっつかず、表面をすべって皿の底に落ちていきます。

つまり水切りが甘いと、かけたドレッシングの一部は葉に乗らずに、皿の底の水たまりに消えていく。タイトルの「半分捨てている」は、この皿の底のことです。

あなたもやってない?チェック
  • □ ザルに上げて、トントンと軽く振っただけで盛りつけている
  • □ 葉と葉が重なったまま、水を切っている
  • □ 洗ったらすぐに、ドレッシングで和えている
  • □ 食べ終わった皿の底に、白っぽい水たまりができる
  • □ 味が薄い気がして、ドレッシングを足している

2つ以上当てはまったら、ドレッシングが葉まで届いていないかもしれません。

サラダは、時間がたつと自分で水を出す

水っぽさの原因は、もうひとつあります。ドレッシングに入っている塩です。

さっきの浸透圧を思い出してください。塩のついた葉は、細胞の中の水を外に出していきます。和えてから時間がたったサラダがしんなりして、皿の底に水がたまるのはこのためです。せっかく冷水で張らせた葉も、ドレッシングで和えた瞬間から、少しずつ水を出しはじめます。

だから、和えるのは食べる直前。すぐに食べないサラダは、ドレッシングを別添えにするのが基本です。水切りが甘いうえに、和えてから時間がたつ。この2つが重なったとき、サラダはいちばん水っぽくなります。

お店では、水をどうやって切っている?

家ではザルで振って終わりにしがちですが、飲食店では、水切りに道具とひと手間をかけるところが多いです。

よく使われるのが、サラダスピナー。かごを回転させて、遠心力で水を飛ばす道具です。業務用には、家庭用よりずっと大きなものもあります。スピナーがないときは、清潔な布巾やキッチンペーパーで葉をやさしく包んで、水気を吸わせます。葉を重ねたまま強く押しつけると傷むので、広げて、軽く。

ちなみに、レタスは包丁で切るか手でちぎるかでも、切り口の変色のしかたが変わります。気になる人はこちらもどうぞ。レタスが変色するかどうかは、切り方ひとつで決まる

厨房の裏話

水を切った葉を、キッチンペーパーを敷いたバットや容器に広げて、冷蔵庫でしばらく休ませるお店もあります。残った水気をペーパーが吸って、葉は冷えたまま張りを保ちます。

営業前にまとめて準備しておき、注文が入ったら和えるだけ。水切りは、味のためであると同時に、忙しい時間帯を回すための段取りでもあるんです。

まかない実験:水切りの差を、食べて確かめる

言葉で聞くより、一度食べ比べたほうが早く分かります。まかないのサラダで試してみてください。

  • 準備:同じレタスを冷水にさらしてから、3つに分ける
  • A:ザルに上げただけ
  • B:ザルで軽く振る
  • C:スピナー、またはペーパーでしっかり水を取る

3つに同じ量のドレッシングをかけて、すぐに食べ比べます。見るポイントは3つ。味の濃さ、葉にドレッシングが絡んでいるか、そして5分後の皿の底です。AとCを並べて皿の底を見比べると、水切りの差が目で見て分かるはずです。

先輩に「水気、ちゃんと切っとけ」と言われたら

厨房で「水気切っとけ」と言われたら、それは味がボケるのを知っている人の一言です。ここまで読んだあなたなら、その理由はもう分かりますよね。素直に従うのが正解です。

逆に、先輩が「ザルで振れば十分」というタイプだった場合は、こう動いてみてください。

  • レベル1:「はい」で通す。お店の量や提供のスピードによっては、ザルで十分と判断していることもあります。まずはお店のやり方に合わせましょう。
  • レベル2:味の話として聞く。「ドレッシングの量はこのままで大丈夫ですか?」と聞いてみる。水切りを否定せずに、味の話から入るのがコツです。
  • レベル3:皿で見せる。信頼関係ができてから、まかない実験のAとCを並べて「一回食べ比べてもらえませんか?」とお願いする。

そして、言わないほうがいい一言がこちら。「浸透圧的に言うと……」「ネットで読んだんですけど……」。正しいことでも、言い方ひとつで、あなたのサラダは食べてもらえなくなります。

今日から変わること

冷水にさらす知恵は、そのままでいい。変えるのは、そのあとのひと手間だけです。明日の仕込みで、まずひとつ試してみてください。

この記事のまとめ
  • 冷水にさらすとシャキッとするのは本当。浸透圧で細胞が水を吸うから
  • 浸けっぱなしにせず、葉が張ったら引き上げる
  • 残った水は、ドレッシングを薄めて、油をはじく
  • ザルで振ったら、スピナーかペーパーでもうひと手間
  • ドレッシングは食べる直前に。すぐ食べないなら別添えにする

タイトル、ちょっと盛りました度

5段階中3。「半分捨てている」は、ちょっと言い過ぎました。でも、食べ終わった皿の底を一度見てみてください。そう言いたくなる気持ちが、たぶん分かってもらえると思います。

あなたもやってた?

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